ホテル雅叙園東京で結婚式予約キャンセルトラブル。なぜ?一体何が起きたのか。(2025年2月21日追記)
2025年2月、東京で結婚式場を探したことのある人ならば、誰しもが知っているであろう有名結婚式場「ホテル雅叙園東京」に、式場予約キャンセルのトラブルが発生しているとの一報が入ってきました。
一体何が起きたのでしょうか。
現時点で、わかっていることをベースに読み解いてみたいと思います。
第一報は「リニューアル工事のため」
まず、初報で出ていた内容を要約すると以下のとおりです。
1.2025年10月以降に「ホテル雅叙園東京」にて結婚式の予約を取っていたお客様に対し、突然ホテル側から連絡があった
2.その内容というのが、2025年10月以降、建物の全館リニューアル工事を始めることになり、それに伴いホテルや結婚式場は休館することとなったため、結婚式の予約をキャンセルするか、前倒しで実施するかを選んでくれというもの
公式HP上でも、2025年2月17日付で、建物リニューアル工事のお知らせが掲載されていたようです。
これだけを見聞きすると、その期間の予約を取り始めていたにもかかわらず、あえてリニューアル工事を始めるというのは、何かしら重大な事情があるように感じます。
上記のニュースの最後の方に記載がありますが、予約者に対してホテル側からは、オーナー変更に伴って全館リニューアル工事が決まったというような説明もあったようです。
この「オーナー」というのは誰なのでしょうか。
カナダの資産運用会社が物件のオーナーに?
Wikipedia情報では、カナダの資産運用会社である、ブルックフィールド・アセット・マネジメントが、2025年1月にホテル雅叙園の土地や建物の一部を取得したようです。
そして、そのブルックフィールド側の意向でリニューアル工事が決まったとの記載があります。
つまり、前述のオーナーとはこのブルックフィールド・アセット・マネジメントのことを指しているようです。
ホテル雅叙園東京の運営の状況を整理すると、もともと土地や建物の不動産を所有している会社と実際に結婚式場を含めたホテルを運営している会社は別々であるようです。
運営している会社は、不動産を借りて使用しているのですね。単にホテルのオーナーというと、ホテルの運営者のことを指すように感じるかもしれませんが、今回ホテル側の説明に出てきていると思われるオーナーは、ホテルの不動産を所有しているオーナーの方を指すと想定されます。
全館リニューアル工事は誰が何をおこなうの?
ところで、今回の全館リニューアル工事は誰が何をおこなうのでしょうか?
誰がおこなうかは、原則として賃貸借契約の内容次第になりますが、今回、建物所有者側の意向で工事が決まったようですので、少なくとも建物所有者として行われる工事があると思われます。
ホテルや結婚式場の運営を続けながらでは実施できない工事のようですので、かなりの大規模なものと想像されます。
建物の外装・内装、そして敷地内外構部分の再整備も含まれる可能性が高いのではと感じます。
ちなみに、東京都の有形文化財にも指定されている雅叙園敷地内の「百段階段」は、1935年築の建築物です。
1981年に建築物の耐震基準の大きな改正があり、百段階段はいわゆる旧耐震基準で建てられているということになりますので、もしこの建物の耐震補強工事をおこなうとなれば、かなりの大規模な工事に該当しますが、ホテル雅叙園東京の公式HPによると、2019年に既に大規模耐震補強工事がおこなわれているようですので、当時の工事に何か不具合がなければ、耐震補強工事は実施されないものと思われます。
いずれにしても、工事開始日を、まだ結婚式の予約を受け付けていない時期からに設定しなかったのか、はたまたできなかったのはなぜなのかが不明な状態です。
ホテル雅叙園東京の立場から考えると、ブランドイメージの問題もありますし、トラブルになるようなことは避けたかったはずなのです。
そして、初報の翌日に新たな展開を迎えることになります。
休館理由が「建物賃貸借契約終了」に変わった?
前述のとおり、2025年2月17日付で、ホテル雅叙園東京の公式HP上に、建物リニューアル工事のお知らせが出ていましたが、翌18日にそのお知らせが消え、新たなお知らせが掲載されました。
その内容は「2025年9月30日を以て建物所有者との定期建物賃貸借契約が満了となるため、2025年10月1日より一時休館とさせていただきます。」というものです。
リニューアル工事の話が消え、いきなり賃貸借契約終了の話に切り替わりました。
元々はリニューアル工事が理由であったのが、18日の時点で賃貸借契約終了も新たに決まり、情報が更新されたのか、それとも元々賃貸借契約終了が本当の理由だったのか、その辺りは全くわかりません。
ただ、理由がこのように変わったことで、これまでに何が起きていたのか、今後の展開がどうなるのか、少し想像することができます。
お知らせにもあるように、ホテル雅叙園東京の不動産オーナーと運営者の間の賃貸借契約は、定期賃貸借契約であるようです。
この定期賃貸借契約というのは、契約書に定めた一定の期間が経過すると、原則として契約は必ず終了します。
今回のように、借り手側がホテル等の運営をしていたとすると、一定期間経過後にその運営はできなくなるということです。
ただし、契約終了前に、貸し手と借り手が合意すれば、新たに契約を結びなおし、そのまま運営を続けることができます。
そして、定期賃貸借契約を結んでいる貸し手と借り手が、「契約がそろそろ終了するけど、その後どうする?」という話をするタイミングというのが、ホテル雅叙園東京の場合、今まさにこの時期なのです。
定期賃貸借契約が終了し、新たに契約を結びなおすかどうかについて、基本的に主導権は貸し手側にあります。
借り手が借り続けたいと思っても、貸し手がもう貸さないと言えば契約は結びなおせません。
つまり、2025年10月以降、ホテル雅叙園東京が運営を続けていくのは、建物オーナー次第であるということです。
想像の話ですがあり得る話
ここからは想像ですが、ホテル雅叙園東京側はこう考えていたのではないでしょうか。
”2025年10月で締結中の定期賃貸借契約が終了し、再契約はまだ決まっていないが、これまでの建物オーナー側との関係から、その後も引き続き問題なく、新たな賃貸借契約を結べるだろう"
そして、2025年10月以降の新規式場予約もどんどん受け付けていたのではないでしょうか。
そうであれば、2025年1月にブルックフィールド・アセット・マネジメントが不動産の一部所有者になってから、その想定が崩れてしまった可能性が高いです。
最近の不動産賃貸業界でよくある話が、賃料の値上げです。
今回のケースでいうと、再契約の条件について、賃料の値上げに絡めて、建物オーナー側から次のような提案があったのかもしれません。
・新たに賃貸借契約を結ぶ場合は、これまでよりも高い賃料を要求する
・そのために、建物のバリューアップ工事はおこなう
・バリューアップ工事期間は、営業を中止してもらう
仮に上記のような条件が再契約の内容だとして、建物の借り手であるホテル雅叙園東京側も、既に2025年10月以降の予約も受け付けてしまっているので、工事の時期をずらしてもらえないか条件交渉を打診することはできます。
しかし、建物オーナー側がNOと言えばそれまでです。
出された再契約条件を飲むしかありません。
飲めなければ、そこでの事業は終了せざるを得なくなります。
改めて、お知らせをみてみると、ちょっと変な文章なんですね。
“定期賃貸借契約が満了となるため一時休館"となっていますが、契約が満了するという「原因」では、いきなり「一時休館」に結びつかないのですよね。
細かく事情を説明すると長くなるので、思い切って端折ってみたら生まれてしまった文章のように感じました。
営業再開時期は現時点で未定ですし、そもそも新たな賃貸借契約を再度結んでいるのか、結べる予定なのか、その辺りも一切不明です。
今後の展開に注目したいと思います。
【2025年2月21日追記】賃貸借契約自体は終了が確定している?
2025年2月21日になって、下記のJ-CASTニュースが公開されました。
これによると、ホテル雅叙園東京と建物オーナー側の建物賃貸借契約は、現在の2025年9月30日までの定期賃貸借契約が満了で終了した後、すでに再契約となる可能性はない模様です。
そして、文中に運営特化を交渉中という言葉がホテル雅叙園東京側から出ています。
これはつまり、建物リニューアル後のホテル等の事業運営を、現在のホテル雅叙園東京が担うかどうかも、現時点で未定、白紙の状態であるということを意味します。
【2025年2月21日追記】建物オーナーの思惑とは
上述の記事の中で、ホテル雅叙園東京側が、「運営特化を交渉中」という話をしています。
この辺りの情報が出てきたことで、今回の問題の背景がよく見えてきました。
建物オーナーの思惑は何なのか、推察していきます。
これまで、建物オーナーは、建物の賃貸借契約を結び、借り手からの賃料収入によって収益を得てきました。
借り手は、建物を利用してホテルや結婚式場の事業を運営し、収益を上げそこから賃料を支払います。
このとき、一般的な賃貸借契約であるならば、借り手がおこなう事業がどんなに好調で高収益を上げていても、逆に収益を上げられていなくても、貸し手の建物オーナー側に入ってくる賃料は一定額です。
建物オーナーとして、収益は安定しますが、大きく儲けようとするには合わない事業手法になります。
一方で、建物オーナーは、建物を借り手に貸すのをやめて、自らホテル等の事業を運営する場合、事業での収益を上げれば上げるほど、自らの収益が上がります。
おそらく、2025年1月に不動産の所有権を一部取得したブルックフィールド側は、投資したこの不動産から、より収益を上げるために、ホテル等の事業を直接運営する方針であるのでしょう。
そのため、現在の建物を貸して、その賃料収入を得るという形態を終了させるのです。
ブルックフィールドの本業は、投資運用です。
ホテル等運営の実務のスペシャリストではないはずですので、実際の運営自体は、第三者に委託しておこなうことになります。
運営特化とは、このホテル等運営の実務だけを担うという意味です。
ホテル雅叙園東京側は、そういったブルックフィールド側の意向を把握し、2025年10月以降は、建物を借りるのではなく、そこでおこなわれる事業の実務部分の運営を委託してもらう形で、引き続き、雅叙園の事業に関わっていきたいという交渉を持ち掛けているようです。
建物の全館リニューアル工事後、現在の路線を継続したホテル等の事業運営をするのであれば、ブルックフィールド側もこれまで運営を担ってきたホテル雅叙園東京に運営委託するのが合理的と感じます。
しかし、現状、事業運営委託は未定ということで、かなりこれまでの事業からスタイルやコンセプトに大きく変化を加えることも視野に入っているのかもしれません。
【2025年2月21日追記】このトラブルから学べること
今回のホテル雅叙園側の対応としてまずかったのは、建物を借りて使う契約が終了し、引き続き建物を借りて使えることが確定していないにもかかわらず、使える前提で結婚式の予約を取り続けてしまったこと、になると推察されます。
その後のキャンセル理由の説明の仕方も、適切ではなかった可能性がありますが、不動産に関する学びポイントとしては上記となります。
建物の賃貸借は、大きくわけて2種類あり、普通賃貸借と定期賃貸借です。
普通賃貸借は、一般的に期限の定めがあったとしても、借り手が引き続き借りて使用を続けたい場合には、余程の理由がないと貸し手側はそれを拒むことができません。
一方で、今回のトラブルでも登場した定期賃貸借は、原則として、当初に定められた契約終了期日が到達するとその契約は終了し、その後借り手が引き続き借り続けたいと考えても、貸し手が了承しない限り再契約はできず、当然使用することもできません。
結婚式場のように、一年以上先の予約を取るような事業はあまり多くないかもしれません。
ですが、いずれにしても借りている不動産にて事業をおこなっている場合、それが定期賃貸借契約であったならば、現在の契約が満了となった後も再度賃貸借契約を結べる見込みがあるのかどうかは、できるだけ早い段階で事前にしっかりと把握しておく必要があります。
なお、法律で定められているルールとして、定期賃貸借契約を結んでいる貸し手側は、その契約が満了する一年前から半年前までの間に、契約が終了する旨を通知することになっています。
つまり、どんなに遅くとも、契約満了の半年前までに貸し手側から契約に関する連絡が来ます。
そして、そのタイミングで貸し手側に再契約の意向があれば、再契約の打診をされることが多いです。
打診がなければ、再契約の意向がない可能性が高いです。
事業を継続したいのならば、まずはすぐに貸し手側に連絡をとり、交渉を始めるべきです。
再契約が難しいのであれば、別の物件を探すなどして事業継続の道を探っていくこととなります。
不動産に関するご相談はサウザンドハンズへ
今回、結婚式場の予約キャンセルに関連するトラブルについて、どうやら不動産の賃貸借契約が大きく影響している可能性がありそうだということで、取り上げてみました。
実際に起きている事実とは異なっている可能性も十分にありますが、逆に現時点でみえている状況から判断すると、上述のようなことが起きていてもおかしくないのですね。
不動産の契約に関することはトラブルも起きやすく、専門性が高い分野でもあります。
何か不動産取引をおこなう場合には、トラブルに合わないようにするためにも、適切な専門家に相談することが重要です。
不動産に関するご相談がございましたら、サウザンドハンズへお気軽にご相談ください。
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