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【住宅ローン】マイナス金利解除…ネット銀行の生き残りを賭けた戦いが始まる

住宅ローン

寺田 裕太郎

筆者 寺田 裕太郎

不動産キャリア14年

ネット銀行の住宅ローン厳しい戦いの幕開けか


2024年3月、日本銀行がマイナス金利を解除し、今後、金利のある世界が訪れるとされています。
住宅ローン業界もその影響を強く受けるのは明らかであり、すでに少々変化も生まれてきました。
今回は、マイナス金利解除から約一ヶ月が経過した現時点で、今後の住宅ローン業界において、ネット銀行がどうなるのか考察してみたいと思います。

ネット銀行の住宅ローンといえば、これまでのマイナス金利下において熾烈な低金利競争を繰り広げ、新規取り扱い高を大きく伸ばし、業界を席捲してきました。
しかし、このままマイナス金利解除に留まらず追加の利上げが進むと、多くのネット銀行にとっては厳しい戦いを強いられそうな状況となりそうです。
その理由を解説します。
※特に但し書きのない限り、この記事における預金金利とは普通預金金利、住宅ローン金利とは変動金利のことを指します。


ネット銀行の事業モデルとは?


多くのネット銀行の事業モデルは、店舗コスト、人件費コスト等を抑え、既存銀行よりも経費をかけないことで、既存のメガバンクや地方銀行よりも有利な条件の住宅ローン商品を開発し、新規貸し出し取り扱い件数、取扱高を増やしていくというものです。
有利な条件とは、わかりやすいところで低い貸し出し金利が挙げられ、最近は、ローンに付帯する団体信用生命保険の保障内容についても競争が起きていました。

一方、お金を貸し出す場合には、まずお金を集めなくてはなりません。
ネット銀行の中で、法人向け取引に力を入れている銀行はなく、基本的に個人を中心に預金を集め、個人に対して融資をおこない、その金利差が収益となっています。
そして、個人に対する融資は、圧倒的に住宅ローンの比率が高くなっています。
ネット銀行から住宅ローン事業を取ると、何も残らないと言っても過言ではないくらいです。
個人から預かったお金をそのままスライドさせて個人に住宅ローンとして貸し出しているようなシンプルな構図が描けます。
これは、海外のグローバル事業や法人取引にも力を入れつつ、個人向けでもカードローンや証券、保険などの取り扱い手数料など、住宅ローン以外にも収益の柱があり、住宅ローン事業への依存度が圧倒的に異なるメガバンクとの大きな違いとなっています。


金利上昇局面で何が起こる?


マイナス金利解除後に、すぐさま多くの銀行が発表したこと、それは「預金金利の引き上げ」です。
顧客心理として、当然、金利の低いところに預けるよりも、金利の高いところに預けたいと考えますので、各銀行預金残高を減らさないように、多くの銀行が横並びで預金金利を引き上げました。
これは、銀行にとって負担が増えることであり、預かっている預金に対して支払い金利負担が増えることは、ネット銀行だから経費を抑えられるといった類のものではなく、既存銀行であってもネット銀行であっても、引き上げ幅が同じであれば同じように負担となります。

ネット銀行各行は、住宅ローン貸出残高を積み上げていく中で、比例するように、預金残高も積み上げてきました。
原資としての預金残高あってこその住宅ローン貸出残高です。
預金残高は減らせませんし、今後も業績を伸ばしていくには増やしていかなければなりません。
そうすると、各銀行が預金金利を引き上げるのであれば、最低でもネット銀行も同水準程度には引き上げなければなりません。

この負担コスト増に対し、現状の収益で吸収する場合は収益率が悪化します。
収益率を下げないためには新たな収益を即座に確保する必要があります。
ネット銀行は、前述のとおり、住宅ローン事業によって得られる収益がほぼ全てであり、その内訳は、新規獲得の際の取り扱い手数料と、既存の貸出残高にかかる金利収入です。
既に存在する莫大な預金分にかかる金利コスト上昇分を補うには、既存貸出中の住宅ローンの金利を引き上げて収益を確保するしか、実質的に選択肢はない状態といえるでしょう。


マイナス金利解除で実際に起きたこと


実際に、マイナス金利解除で何が起きたかというと、住信SBIネット銀行とイオン銀行は、預金金利を引き上げ改定するのと併せてローン貸出基準金利引き上げも発表したのです。
ネット銀行における収益基盤のある意味脆さともいえる部分が垣間見えた瞬間なのかもしれません。

なお、その他のネット銀行は、auじぶん銀行、ソニー銀行、paypay銀行の3行については、預金金利引き上げ発表時に、住宅ローン貸出基準金利引き上げの発表はありませんでした。
 また、本記事執筆時点(2024年4月26日時点)でも貸出基準金利引き上げの発表はありません。 
預金金利上昇によるコスト増に対し、収益率が悪化してでもこのまま踏ん張っていく方針なのでしょうか。

なお楽天銀行は、元々マイナス金利下でもマイナス金利導入前水準の比較的他行より高い預金金利を維持していた特殊事例の銀行です。 今のところさらなる預金金利引き上げの発表はありませんが、住宅ローンの基準金利については、そもそも(完全?)指標連動型のため、マイナス金利解除前より既に上昇済です。


今後の見通しは?


2024年4月の日銀政策決定会合においては、政策金利の現状維持が発表され、さらなる追加利上げはありませんでした。
ただ、今後追加利上げの可能性は十分にあると言われています。
ネット銀行に限らず、利上げが起きる毎に、住宅ローンの金利は影響を受けます。
しかし、収益構造的に、ネット銀行の住宅ローンは、より影響を受けやすい状況となる可能性が高いです。

 一方で、金利上昇は不動産市況を冷え込ませる要因の一つであり、不動産価格の下落にも繋がります。
都心好立地では金利上昇の影響なく相場上昇を続けるケースも考えられますが、そのようなエリアは、現金購入や事業性ローンが利用されるなど、住宅ローンの貸出残高増には繋がりにくいです。

整理すると、ネット銀行は、今後の政策金利上昇局面において下記のような条件のもと、今後も業績を伸ばすための戦いを続けなくてはなりません。
・住宅ローンの新規借入のパイが減る
・預金残高流出に繋がらないよう、預金金利は上げなければならない
・魅力的な住宅ローン商品を提供し続けなければならない
・ローン金利が上がりやすいというイメージはつかないようにしたい

収益構造の安定するメガバンクとの競争が激しくなることも考えられます。
戦略の転換を迫られるネット銀行が出てくるかもしれませんね。


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